作品解説・伊勢物語「芥河」
 
 
 
墨と筆だけで描きました。 モノクロ作品です。

伊勢物語。
平安前期に作成された、作者未詳の物語で、
主人公は在原業平(ありわらのなりひら)という平安時代の貴公子だと言われています。
              

在原業平については、「かきつばた」の作品解説より御覧下さい。


その伊勢物語・第六段のお話、「芥河」。
主人公の男が、片思いで思い続けていたある女性がいました。
 

何年も求婚し続けていたものの、思いは実らず汗
ある夜、とうとう女性をさらい出してしまいます。
その女性を連れて、 「芥河」(あくたがわ)という河のほとりを必死の思いで逃げて歩いていました。
 
 
その時背負っていた女性が、あたりの草の上に光る露を見て、ふと口にします。
「かれはなにぞ」(あれはなんですか)DASH!

外の世界を何もしらない、無知な、無垢な深窓の姫君。
 
 
自分が事もあろうに何だかよくわからない色気づいた男にさらわれている最中に、
 草の上にきらきら光る露を見て、
まあ、あれは何?あのきらきら光る綺麗なものは、一体なにかしら?キラキラ と無邪気に聞きます。
 
 
一方男の方は、それどころではありません。
 
やっとの思いで盗み出した最愛の女性を連れて、息を切らして必死で逃げている最中、
 誰かに見つかるかもしれない、連れ戻されてしまうかも知れない、
はたまた物騒になって来た昨今、全く知らない第三者になんか変な因縁つけられてボコボコにされないとも限らない…
 
 
俺がこんな時にこの子はもう…ビックリマーク これだから女性というものは、
客観的な判断ができなくてもうコラ…ビックリマーク
天然な所も可愛いけど、今はもうそれどころじゃコラ…ビックリマーク
 

そんなわけで、「あれは露だぜベイベー」とロマンチックに説明している暇も余裕も無く、
無視をしたというわけではないが、その質問は答えないままになってしまいました。
 

目的地までの道中、夜になってしまい、 雨も降って雷も鳴って来てしまったので、
その辺にあった荒れ果てた蔵に女性を入れて、自分は弓などを持って武装して、
扉の外で警護して夜の明けるのを待ちます。
その場所が、鬼の巣くう場所だとも知らずに…雷
 

じっと外を見張っている最中、 男の知らない内に女性の元に鬼があれわれ…メラメラ

 
 
 
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああビックリマークあせる」と悲鳴をあげるものの、
 雷の音にかきけされ、男には聞こえず…汗

 
女性は鬼に一口で食べられてしまいました汗

 
やっと夜も明けて、男が蔵の中を見てみると、 最愛の女性の姿がない………!!!
じだんだを踏んで泣きわめきましたが、どうしようもありませんでした。
そして、男はこう詠います。
 
 
 
 

 白玉か なにぞと人の 問ひし時 露とこたへて 消えなましものを
 
~あれは、何かしら?あのきらきら光るものは、白玉(真珠)ですか、何ですか?と
あの子が自分の側で自分に聞いたあの時、
 「あれは露です」とちゃんと答えてあげて、そしてそのまま、
私は露のように 消えてしまえばよかった…~
 

 なんとも切ないお話ですね汗
絵に表したのは 女性をさらって必死で逃げている男と、
背負われて無邪気に露を見つめる女性、
そしてイラストに挿入したのは、こちらの和歌です↑



実はこの話の真相は、 女性の兄弟二人が、女性の泣き声を聞きつけて、
さらわれたのを取り戻しに来た、 という事なんだそうでございます。
それを、鬼に食われたと語った。

まあ、その男からしてみれば、手の届かない所に行ってしまった女性は、
鬼に食われたも同然でしょう。
 
 
 

 この女性ですが、藤原 高子(ふじわらのたかいこ)さんという女性で、
二条の后とも呼ばれる、清和天皇の中宮(正妻)であった人です。
とても美しい女性で、天皇の所へ入内する前、若い頃は、
主人公の男性・在原業平と恋仲だったと言われています。
 この物語は、その入内前のお話ですね。
 
 
 

身分高い女性が、天皇の所へ入内してしまうのを、 どうにも出来ないでしょうが、
引き裂かれた貴公子と美しい姫君の切ないラブストーリー、 作者が誰であれ、
当時の人々にとって夢のような、心惹かれる物語であった事でしょうキラキラ